問題解決の共通ステップ問題解決研修 手順・段取り)


 フリーWebカレッジ 組織運営学科 コース000500 ネット研修 担当講師:蒔苗昌彦  eラーニング 通信教育  問題解決研修 


●セクション1「当コース開講の趣旨」 問題解決研修

官民業種にかかわらず、組織運営・業務運営を続けていけば、様々な問題が発生すると思う。そのため、組織のメンバー、特に経営者・管理職等のマネジメント層は、問題解決に向け日々努力を重ねていらっしゃることと思う。当コースはマネジメント層を対象に、組織的な取り組みとして問題解決に当たる際の参考用として※1、問題という概念の定義を明確にした上で、問題解決の共通ステップを説くために開講する。

ここでいう「問題解決の共通ステップ」とは、「組織運営・業務運営の上で発生する問題ならばいかなる問題に対しても適用すべき」と私が考えるところの、いわば最大公約数的な「問題解決へ向けてのステップ」のことである。※2

なお、実際に問題を解決するためには、まずは担当者の意志・意欲・根性・勇気そして誠実さ等の精神が必要である。当コースでは、これ以上触れないが、こうした精神がなければ問題解決のステップを学んでも問題解決は捗らないことを冒頭に確認しておく。では、次のセクションから本題に入る。

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《目次》サイトマップ

セクション1「当コース開講の趣旨」
セクション2「『問題』という概念の定義」
  2-1
問題解決の大前提となる『問題の概念定義』」
  2-2
「『問題』という概念の定義」
  2-3
「『所定の基準』とは?」
  2-4
「『問題』の有無を論じる前に、必ず点検すべきこと」
  2-5「基準についての疑問を解く」
  2-6「建設的課題について」
セクション3「問題解決の共通ステップ」(問題解決の手順・段取り)
  3-1
「問題を明確にする」
  3-2
「原因を掴む」
  3-3「
原因を取り除くことが可能か否か、判断する」
  3-4「可能と判断した場合には、その原因を取り除く」
  3-5「否と判断した場合には、
       原因による悪影響を、遮断することが可能か否か、判断する」
  3-6
「可能と判断した場合には、遮断するための対策を講じる」
  3-7
「否と判断した場合には、原因による悪影響を、減少させる」
セクション4「まとめ 問題解決のポイント確認」

※1:
組織的な取り組みとして問題解決に当たるのと、個人的な取り組みとして問題解決に当たるのでは、趣が異なる。組織運営学科の当コースではあくまでも組織的な取り組みとして問題解決に当たる際の参考用とする。

なお、もし、組織の問題なのにもかかわらず、個人にすべて押しつけるような形で解決をしなければならない場合があるならば、それ自体が問題と言える。やはり、組織は組織力を発揮してこそ組織と言える。

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※2:
いわば最大公約数的な問題解決ステップであるゆえ、官民業種、国家や社会体制にかかわらず、参考にして頂けると思う。

●制作・著作:蒔苗昌彦(担当講師)

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これ以外の使用(印刷配布・組織的利用・商業利用・転載等)については電子メールにてお問い合わせ下さい。ご協力よろしくお願い致します。

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セクション2「『問題』という概念の定義」 問題解決研修

2-1「問題解決の大前提となる『問題の概念定義』」

ステップの説明に入る前に、問題解決の大前提を確認する。その大前提とは、「問題」という概念の定義である。なぜ、『問題の概念定義』が問題解決の大前提となるのか?

何も「問題」に限らず、組織のメンバー間で概念や用語について解釈がバラバラであれば組織が混乱するが※1、こと「問題」については混乱するからである。

たとえば或るメンバーが或る事を問題であると判断し、その解決策を上司に提案したところ、上司はそれは問題ではないと判断し却下してしまったが、やはりそれは問題であった・・・といった場合、組織は混乱する。

逆に、上司側が或る事を問題だと思い、解決行動を部下たちに強く訴えても、部下たちがそれは問題ではないと受け止めいい加減に対応した・・・といった場合も、組織は混乱する。

また、或る部署が問題だと思い、解決に向けての協力を他の部署へ要請したところ、他の部署としてはそれは問題ではないと考え協力をしなかった・・・といった場合、組織は混乱する。

「こうしたことは、単なる価値観の違いであり、それはよくあることで、それにより組織が混乱すると言うのはオーバーだ」等の意見もあるかもしれない。しかし、私は、こうした食い違いは、やはり組織の混乱を招くと思う。つまり、「問題」という概念の解釈・判定の不一致は、それ自体が大きな問題なのである。

2-2「『問題』という概念の定義」

では、当コースにおける「問題」という概念の定義とは? それは次の通りだが、これはあくまでも組織運営・業務運営の上での問題に限っての定義である。それ以外の問題、たとえば人生問題、社会問題、国際問題等々は範囲外なので誤解なきよう。※2

●当コースにおける「問題」の定義

 所定の基準に達していない事態・状態・状況・場合等。

ただし、この定義は、「所定の基準」が妥当であるとの前提に立つ。

この意味では、「問題」という概念の定義は、「妥当なる所定の基準に達していない事態・状態・状況・場合等」という形で、「妥当なる」の一言を加えるべきかもしれないが、そもそも基準は妥当であるべきとも言えるため、割愛した。

「所定の基準」という用語に抵抗感のある人は、「標準」や「要求水準」とか、「あるべき状態」等の言葉で代替して頂いても構わないが、どの言葉を採用しようと、組織内で用語統一できる(または用語統一しやすい)ことが条件となる。

なお、「理想の状態」「最高の状態」「ベストの状態」という言葉を適用すると美しくはあるものの、後述(2-6)の「建設的課題」に取り組み目指す成果との違いが分かりにくくなるので、これらの言葉で置き換えることはお勧めできない。

2-3「『所定の基準』とは?」

さて、前項の通り「問題」を定義するならば、その定義文の中にある「所定の基準」という概念も定義する必要が出てくる。

では、ここでいう「所定の基準」とは? その定義は次の通り。

●当コースにおける「所定の基準」の定義

組織や業務の運営状態が「これでよし※3」と判断できる諸々の目安。

ここでいう目安とは、定量的な目安に限らない。定性的な目安も含める。

たとえば、営利目的の組織の場合、期ごとに収支の目標を定めると思うが、それは定量的な目安に該当する。もし収支目標に達することができなかった場合、それは問題となる。

部品製造において製品の精度について基準を定めた場合も定量的な目安に該当し、もし製品が精度の基準に達していない状態があれば、それは問題となる。

定性的な目安は、たとえば組織の理念はそれに該当する。だから、もし組織や業務が理念に到達していなかったり、理念に矛盾するようなことなどがあれば、問題となる。

或る作業の手順を規定した場合も、それは定性的な目安となる。だから、もしその手順通りに作業が行われないようなことがあれば、問題となる。※4

他にも、組織や業務の運営状態が「これでよし」と判断できる目安は、色々とあるはずである。

2-4「『問題』の有無を論じる前に、必ず点検すべきこと」

前項までに述べたことから、「問題」の有無を論じる前に、必ず点検すべきことが浮上する。それは3点。

第一は、「所定の基準の有無」である。
もし基準が無いならば、基準が無いこと自体が問題となる。※5

第二は、所定の基準が有ることを確認した上で点検すべきこととなるが、「その基準の設定が妥当か否か」である。もし妥当でないならば、妥当でない基準を定めたこと自体が問題となる。※6

第三は、妥当なる所定の基準が有ることを確認した上で点検すべきこととなるが、「そのせっかくの情報を共有できる状態となっているか否か」、である。もし共有できる状態になければ、共有できる状態にないこと自体が問題となる。※7

2-1にて「問題」の解釈・判定の不一致は大きな問題と述べたわけだが、それ以前に「基準がない状態」「妥当ではない基準の設定」「せっかくの基準が共有できない状態」という問題の有無を点検し、もしそうした問題が有るのなら、そちらを先に解決しなければならない。そうしなければ、問題解決のステップへと進むことができない、ということなのである。

これを回り道と受け止める人もいるかもしれない。しかし、妥当なる基準が共有できている組織ならば、問題の解釈・判定の不一致の確率が減り、組織内の協力も推進されるであろう。その結果、問題の発生率も減少するであろう。だから、「基準がない状態」「妥当ではない基準の設定」「せっかくの基準が共有できない状態」という問題がないか点検することを、回り道としてではなく、当然、通過していく道と受け止めて頂きたい。

2-5「基準についての疑問を解く」

ここで、脇道にそれるが、「基準」についての補足説明を、一つだけ行いたい。

というのも、前項までを読む中、「組織運営上・業務運営上のあらゆる事柄に、一々個別に所定の基準を定めていくことはできないのでは?」という疑問が沸く可能性があり、この疑問を解いておきたいからである。

まず、なぜこの疑問が沸く可能性があるか説明しよう。

たとえば1万人の職員がいる組織があるとして、仮に一人平均50の作業(小単位の仕事)を担当していたとすれば、その組織には総数50万の作業があることになる。そこで、「一部の作業ならばまだしもそのすべてに一々個別に基準を定めると、合計50万の基準作りをすることになり、これだけ膨大な基準作りなど到底不可能だ・・・」といったような考えが起きても自然だからである。

しかし、冷静に考えていくと、実際には、これだけ膨大な基準作りを組織内で行う必要がないことが分かるはずで、この疑問は誤解に基づくものであることに気づいて頂ける。

たとえば、この世で最も強制力を持つ基準として、法律や条例等の基準があるが、それは組織外から情報提供される。だから提供された情報をそのまま、「これでよし」もしくは「これ以上にしよう」との目安として用いればよい。

職務総数に関しても、冷静に考えれば、職員の総数より職務の総数が下回る※8ことが分かるはずで、それゆえ、たとえ一つ一つの作業について基準を作ったとしても、上述のような基準の数にまでならないことは理解できる。

たとえば、仮に職員総数1万名の旅客運輸の航空会社があり、毎日平均500便を飛ばしている運営状態だとしよう。すると、まずは述べ人数にして少なくとも500の機長が毎日稼動していることになり、かつ、交替要員としてさらに500名スタンバイしているとすれば、機長に就く人が千名存在することになる。だから、職員の総数が1万人でも、職務の総数は機長の分だけ考えても9千を超えることはない。さらに副操縦士に就く人が機長と同数ならば、職務総数は8千以下となる。さらに、客室乗務員が1機当たり5名、交代要員も同数とすれば、職務の総数は3千以下となる。さらに空港でのチェックイン職務、整備等々、一職務に複数の職員が就く職務を数えていけば、職員の総数より職務の総数が随分と下回ることが理解できよう。

細かいたとえと出してしまったが、では、この航空会社が「死傷者ゼロ」という理念を掲げていれば、その一言だけで旅客機運航に関わる全ての職務と作業に関わる明確な基準となる。

したがって、組織運営上・業務運営上のあらゆる事柄に、一々個別に所定の基準を定めていく必要はないことになり、冒頭に述べたような疑問は解消する。

なお、上述の他にも「基準」のたとえを多数あげることができるが、それは「基準」をテーマとした専門コースにて改めて別途行うこととする。

2-6「建設的課題について」

以上の説明はすべて、所定の基準とそれに達していない場合に関わる説明である。では、基準には達しているものの、さらに基準以上に高めたい課題についてはどう考えればよいのだろうか?

名称については、「建設的課題」と呼ぶことを私は勧めている。

注意点としては、「問題」と別扱いすること、つまり「問題」と「建設的課題」を混同しないことである。

「まさかこの両者を混同する人などいないだろう」との意見もあるかもしれない。が、意外にもいるものだ。

たとえば、部下なり請負業者なりが、与えられた仕事を終え結果を、上司なり発注者なりに示したところ、「それでは不足だ・物足りない」と怒鳴られるケースがある。

こうしたケースは、たいてい、基準が無いか・基準を共有できていなかったことが原因だと思う。

しかし、時おり、「基準には達しているがそれだけでは物足りない。さらに上を目指せないのか」という高度な要求をしているにもかかわらず、要求している側がそれを認識していないため、あたかも問題が発生しているように自分自身取り違えていることが原因となっている場合がある。

だから、私たちは、やはり「問題」と「建設的課題」とを仕分けし、別扱いしなければならない。が、そのためにも、まずは所定の基準が必要であることを理解して頂けるだろう。

当コースは、問題に関するコースで、建設的課題に関するコースではないので、それこそ両者の混同を避けるため、建設的課題についてはこれ以上は触れない。いずれ別の機会にて触れる。が、ともかく、優先すべきは問題解決である。もし問題解決を後回しにして建設的課題に取り組もうする姿勢があるのならば、それこそ問題である。※9

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※1:
私が言うところの「組織が混乱する」とは、どのような事態・状態を指しているのか?
それは、「組織力を発揮できない状態」を指している。なお、「組織力」は「チーム力」へと置き換えて解釈して頂いても構わない。
 
※2:
人生問題、社会問題、国際問題等々は、当コースにおける「問題」の定義文中の、「所定の基準」について関係者の合意を事前に形成することが不可能な事柄、困難な事柄があまりにも多い。それゆえ、当コースの定義は適用できない。定義が適用できない以上は、当コースの説明も適用できない。
 
※3:
ここで言う「これでよし」との判断とは、必ずしも「それ以上高めようもない最高の状態」に対して下すものではない。むしろ、「最高ではないが、このレベルを維持し続けることさえできれば業務に支障は出ないであろう状態」に対して下すほうが現実的である。
 
※4:
だからと言って、すべての作業手順を規定化し文書化しようとは考えないこと。作業担当者に作業の方法を任せるべき場合も多くあるはずで、そうした作業には作業手順書は不要である。この考えに関しては、コース000030「職務分掌マニュアルのあり方・作り方・使い方」のパート2セクション7で詳細に説明してあるので、そちらを受講のこと。
※5:
「たくさんの仕事のすべてに渡り、基準を定めることなど不可能では?」という疑問に対しては、このあとすぐ応える。(2-5にて)
※6:
「妥当でない基準」の典型の一つは、その組織の実力では到底届きそうもない基準である。届きそうもない基準は、見方によっては理想の基準であったり夢の基準であったりして美しく感じられるが、なまじ従業員が熱心だと、その基準を達成しようと無理のある業務運営を行い、事故・災害を誘発することになりかねない。逆に従業員が冷静だと、建前の基準として形骸化し、組織のモラルやモラールが低下する。

もう一つの典型は、法律を下回る基準であるが、こちらのほうは私が注意を喚起するまでもなく、誰もが充分理解している例だと思う。

※7:
その時点では情報を共有していなくても、共有しようと思えばすぐに共有できる体制になっている場合は、ここでいう「情報を共有できる状態にない」には該当しない。

たとえば、上司と部下の両者が、或る規定に関して知識がないことが分かり、「じゃ、一緒に、規定集を見てみようか」ということになり、一緒に規定集を閲覧し、該当規定について一緒に知る・・・という状態になっていれば良い。知らなくても忘れていても、知ろうと思えばいつでも知ることができる、確認しようと思えばいつでも確認することができる、という状態・体制を、組織は維持する必要があるのだ。

 
※8:
これはあくまでも職員が何十・何百・何千・何万もいる組織における話である。たとえば私が代表取締役をしている会社は、私の自営業時代からの延長線にあり実態としては私の個人事務所のようなもので、常勤の社員が私一人しかおらず、あと皆、非常勤やパートタイマーであり、ほとんどの仕事の私一人でこなす。具体的には、経理も営業も経営企画も庶務もITも研究開発も製作も、一人でこなす。つまり、一人の職員が複数の職務をこなすわけである。
しかし、これは組織というより個人の事業といったほうが良いほど職員数が少ない事業形態だからこうなるだけのことだ。職員が多い組織においては、職員の総数より職務の総数が少なければ少ないほど、生産性が高くなり、人数規模の大きな組織を形成している効果を得ることができる。
 
 
※9:
2005年12月、某大手電機メーカーが、十年以上前に自社が販売した製品の故障により死者が出たことを受け、同社の全てのCMを当該製品の警告および買い取り・無償修理および謝罪をする内容に切り替えた。この内容をTVのCMでご覧になった人は多くいると思う。
死者が出るという最悪の事態であるから、当然の対応である。
が、この大手電機メーカーは、少なくとも、左記で注意喚起した「問題解決を後回しにして建設的課題に取り組もうする姿勢があるのならば、それこそ問題である」という点はクリアしている。死者が出たことの責は引き続き負わなければならないが、問題解決を優先しているこの姿勢は認めてあげるべきだし、見習うべきだ。
 

問題解決研修

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●セクション3問題解決の共通ステップ」   問題解決研修

セクション1で述べたように、当コースでいう「問題解決の共通ステップ」とは、「組織運営・業務運営の上で発生する問題ならばいかなる問題に対しても適用すべき」と私が考えるところの、いわば最大公約数的な「問題解決へ向けてのステップ」のことである。このステップは「手順」や「段取り」へと読み替えて頂いても構わない。

そのステップとは、次の通り。

【ステップ1】問題を明確にする。※1

【ステップ2】原因を掴む。※2

【ステップ3】原因を取り除くことが可能か否か、判断する。

(もしくは、そもそも原因が発生しないようにすることが可能か否か、判断する)

【ステップ4】可能と判断した場合には、その原因を取り除く。(もしくは、そもそも原因が発生しないようにする)

【ステップ5】3にて否と判断した場合には、原因による悪影響を遮断する※3ことが可能か否か、判断する。

【ステップ6】5にて可能と判断した場合には、遮断するための対策を講じる。

【ステップ7】5にて否と判断した場合には、原因による悪影響を減少させるべく努力する。※4

ステップは以上である。では、さらに、各ステップに関して、以下、個別の説明を行う。

なお、以下の説明はすべて、「妥当なる所定の基準があり、その情報が共有できる状態となっている」ことを前提とする。

3-1「問題を明確にする」

セクション2にて定義したように、問題とは「所定の基準に達していない事態・状態・状況・場合等」である。

したがって、「問題あり」と判断した者は、「a.所定の基準」と「b.問題扱いしている状態」を示した上、aとbを比較し、aに対しbが下回っていること・劣っていることを示す義務がある。※5

3-2「原因を掴む」

問題が発生したら、まずはその原因を掴む必要があることは、今さら私が言うまでもないほど一般に広く言われているので、このステップについてはすんなり理解頂けると思う。が、念のため次の3点を補足しておく。

1)原因は、一つだけの場合もあれば、複数の場合もある。もし複数の場合には、次のステップ以降は、一つ一つの原因ごとに、進めていくこと。

2)原因は、直接的原因(いわば一次原因)だけの場合もあれば、間接的原因まである場合もある。間接的原因まである場合は、どの原因が直接的原因で、どの原因が間接的原因かが分かるようにして、他者に示すこと。

なお、間接的原因とは、「直接的原因を生んだ原因(いわば二次原因)」、および、「間接的原因を生んだ原因(いわば三次原因)」の双方を指す。

3)間接的原因をどこまで掘り下げて究明するかは、ケースごとに判断すること。

なお、どのようにその判断をしていいか分からない場合には、次の考え方(費用対効果についての考え方)を一助にして頂きたい。

それは、

原因を究明するために必要な経費・時間や労力等を総合したいわば「原因究明投資(a)」の規模が、得られるであろう効果(b)と、社会的責任の大きさ(c)※6を合わせた分より小さいと思われる限り、どこまでも原因究明をする、という費用対効果についての考え方である。

便宜的に計算式のようなイメージを用いて表現すれば、※7

「a⊆b+cと判断される限り、どこまでも究明する」となる。
つまり、aが、bとcを合わせた分よりも少ないか同じと判断される限り、どこまでも究明する。

3-3「原因を取り除くことが可能か否か、判断する」

(もしくは、そもそも原因が発生しないようにすることが可能か否か、判断する※8)

まずもう一度確認しておくが、直接間接かかわらず複数の原因がある場合には、このステップ以降は、一つ一つの原因ごとに進めていくこと。

さて、ここでいう「原因を取り除く」という意味は、次のようなことである。

たとえば、或る屋内作業場があり、或る日、作業者の手元が暗めで作業がしずらいことに気づいたとする。そして、暗めであることの原因を究明したところ、天井の電灯の 一部がいわゆる「球切れ」状態となっていた。そして、電灯の電球はすべて点灯していることが所定の基準であるという前提に立ち、この状態を問題ありと判断した。そして、切れていた電球を新品に交換した、とする。

この場合、「球切れ」が原因に該当し、「電球を新品に交換」という行為が、「原因を取り除く」に該当する。※9

それでは( )で括ったほうの「そもそも原因が発生しないようにする」とはどういうことか?

たとえば、小型のプレス等の機械にて、同じ部品を大量に作る反復作業をしていたとする。(右手で材料を差し入れた後、左手で作動ボタンを押す等の仕組みにて)

ところが、反復しているうちに、危ないと分かっていながらも、材料を入れた右手を手前に引く前に、つい、作動ボタンを押してしまい、右手を負傷する労災(労働災害)が相次いだとする。(ちなみに、危ないと分かっていながらも、つい犯してしまう過ち・うっかり犯してしまう過ちを、「ヒューマンエラー」と呼ぶ。※10)

そこで、ボタンを両手で二つ同時に押さなければ機械が作動しないような仕組みや、安全柵を閉めない限り機械が作動しないような仕組みへと変更し、こうしたヒューマンエラーがそもそも起きないようにしたとする。

この場合、「ヒューマンエラー」がこの労災の原因に該当し、「ボタンを両手で二つ同時に押さなければ機械が作動しないような仕組みや、安全柵を閉めない限り機械が作動しないような仕組みへの変更」が、「そもそも原因が発生しないようにする」という行為に該当する。

3-4「ステップ3にて可能と判断した場合には、その原因を取り除く」

(もしくは、そもそも原因が発生しないようにする)

前項のたとえ話により、すでに説明が済んでいるかたちとなるが、再確認すると、「電球を新品に交換」という行為が、「原因を取り除く」に該当する。

「電球を新品に交換」することは、技術的にも予算的にも可能であるゆえ、「原因を取り除くことが可能と判断した」とのたとえ話となる。が、法律上の照度基準により、そもそも交換義務があるというたとえにもなる話だと思う。

また、( )で括ったほうについて再確認すれば、「ボタンを両手で二つ同時に押さなければ機械が作動しないような仕組みや、安全柵を閉めない限り機械が作動しないような仕組みへの変更」が、「そもそも原因が発生しないようにする」という行為に該当する。

こちらのほうは技術開発と予算の上で大きな負荷がある。しかし、法律もさることながら「人権」という普遍的な理念により労災はゼロとすべきであり、技術開発と予算の大きな負荷があろうとも実施すべき社会的義務がある。

ちなみに、このことからも分かるように、3−2で示した便宜的イメージ「a⊆b+c」は、aを「原因究明投資」から「対策投資」へと入れ換えれば、対策をどこまで行うかの判断にも流用できる。

つまり、上述のプレス等の機械のたとえのように、仕組みを変更するために大きな費用が掛かり、それによる効果も時間当たりの部品生産数が落ちるという点においてはマイナスであっても、人権を守るという点において社会的責任が絶大であるため、「対策実施を断念してはならない」との判断に至って然るべきでる。

3-5「ステップ3にて否と判断した場合には、原因による悪影響を、遮断することが可能か否か、判断する」

たとえば、常設作業場の常設クレーンがあるとして、チェーンで鉄材等の重量物を吊し、A地点からB地点へ移動せる作業を行うとする。その途中で、チェーンが外れ重量物が落下する事故があり、落下地点にたまたま人がいたため死亡するという労働災害が起きたとする。

そこで再発防止策を検討したものの、チェーンが外れないことについて100パーセントの保障はできないとの結論となった。つまり、落下事故は完全に無くすことは不可能と判断された、とする。そこでさらに検討した結果、A地点からB地点までの間を立ち入り禁止区域とし、フェンスで囲み、人が立ち入ることができないようにしたとする。

この場合、まず「落下事故は完全に無くすことは不可能との判断」が、「否と判断した」(原因を取り除くことが不可能と判断した)ことに該当する。

そして、「死亡という労働災害」が「原因による悪影響」に該当する。

そして、「人が立ち入ることができないようにした」という行為が、「原因による悪影響を遮断した」ことに該当する。

3-6「ステップ5にて可能と判断した場合には、遮断するための対策を講じる」

前項のたとえ話により、当ステップの説明はすでに済んでいるかたちとなるが、そのポイントは、たとえ問題が発生しても悪影響が出ないように工夫をすること、である。

「問題が発生しても悪影響が出ないように」という、一見、ありえない状態を可能にしようとするのが当ステップである。
しかし、前項のたとえ話から分かるように、たとえば安全管理/危機管理においては、「事故」という概念と「災害」という概念を使い分け、事故→災害の順で起きる順番とし、→の部分、つまり事故から災害へとつながる部分を除去したり、この部分にくさび打ち込むといった着想により、「事故が起きても災害は防ぐ」という問題解決の考え方が成り立つ。※11

災害という言葉は、安全管理/危機管理以外に適用すると違和感があるだろうから、「損失」等に置き換えてよいと思う。が、ともあれ、問題が発生してから悪影響が出るまでの過程を分析し、途中に「くさび」を打ち込み、結果的に損失が出ない工夫をして頂きたい。

なお、工夫の仕方について説明し出すと、それはまた別の独立したコースとなってしまうのでここでは上述の例に留めておくが、そのコツをとりあえず一つだけ述べておけば、未知のユニークな発明をしようとする前に、既知のありふれた方法を流用・応用できないものか考えることにある。「なんだ、そんな平凡なことでよかったのか」と言われるような方法を探すことが先決というわけである。※12

3-7「ステップ5にて否と判断した場合には、原因による悪影響を、減少させる」

原因による悪影響を遮断することも不可能となれば、あとは、少しでも悪影響を減少させるしか、選択肢がなくなる。

たとえば、初めてガソリンエンジンを開発した技術者の立場に立ってみよう。ガソリンエンジンの利点は、それまでのエンジン(蒸気エンジン)に比べサイズが小さいにもかかわらず、大きな馬力が出ることである。その馬力は、シリンダーの中に空気とガソリンを吹き込んだ上で点火し爆発をさせることによって、獲得する。つまり、爆発が大きな馬力を作る。

しかし、爆発音は鼓膜が破れんばかりの大きさで、そのままでは実用性がない。つまり、ガソリンエンジンの実用化に向けての問題は騒音であり、騒音の原因はシリンダー内での爆発である。

では、原因となる爆発による悪影響を遮断することはできるか? 答えは否である。なぜならば空気を送り込んだ上で排気をする必要上、外気とのつながりを遮断するわけにはいかないからだ。外気とのつながりを遮断できない限り、爆発音は外に漏れる。

そこで原因による悪影響を減少すべく、つまり騒音を減少させるべく、エンジンカバーをつけ、マフラーをつけ、実用化に耐えうる基準に持ち込んだわけである。

ただし、どれだけ努力しても、これでよしと判断できる基準に達するまで、悪影響を減少できない場合も多々あろう。その場合には、該当業務・作業の一時停止(または廃止)をせざるをえない。無理を押して継続すれば、より大きな問題となっていくだろう。

したがって、その問題を担当した者は、基準に達することができないと判断するに至った経緯(つまり解決不可能との判断に至った経緯)を添えた報告書と、該当業務・作業の一時停止(または廃止)の上申書等を、組織へ提出する義務がある。組織としてはそれを受け入れ、一時停止(または廃止)をすること。

もしくは、基準を下げた上で再開することもあろうが、もちろんこれは、基準を下げること自体が問題とならないこと基準を下げることによって別の問題が発生しないことが必須条件となる。※13

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※1:
「問題を明確にする」という記述を、「問題点を明確にする」という記述に置き換えて頂いても、私のほうは構わない。

「問題」と「問題点」の概念の違いを重要視する人から見れば、ずぼらかもしれないが、当コースの文章の全体的流れからすると、「問題」と「問題点」の違いを反映した記述はしないほうが良いと判断したため、あえて「問題点」という用語は用いない。

※2:
ここでいう「原因」は、「要因」と読み替えて頂いても構わない。私自身、以後、両方の言葉を用い、文章の流れ次第では「原因」よりも「要因」を使うこともあれば、「原因・要因」という形にて併記する場合もあるので、ご了解下さい。
※3:
ここでいう「原因による悪影響を遮断する」とは、「原因による悪影響をゼロにする」という意味である。そして「ゼロにする」という意味は、「皆無にする」という意味である。「限りなくゼロに近づける」という意味ではない。完璧にゼロにすることが、「遮断する」ことである。
※4:
悪影響を遮断できないとなれば、あとは悪影響を減少させるしか道は残されない。が、それさえ不可能ならば、そのことを組織へ報告すること。そして組織側はその情報を組織全体に流し、認識の統一を図ること。たとえネガティブな事柄であっても、情報の共有を図ることが大切である。
 
※5:
他者に理解・納得してもらうための義務。説明責任である。
 
※6:
cを抜いて判断することは、どのような場合であっても、してはならない。
※7:
あくまでも費用対効果についてイメージを伝えるための便宜的な表現であり、数学の根拠は一切ない。特に、bとcの性質が異なるだけに、両者を足すという点においてイメージとしても無理があるかもしれない。が、この考え方を抜きに問題解決に取り組むことは、非現実なので、是非とも、あらゆる形で注意を喚起したく、あえて用いる。
※8:
「原因を取り除くこと」と、「そもそも原因が発生しないようにすること」は、方法の段階で着想が異なる。以前は前者に一本化して表現していたが、当コースを機に、分けて表記することにした。
※9:
これが最もシンプルな問題解決のケースとなるが、残念ながら、現実には、こう簡単に問題解決できないことが多いであろう。
そこで、次のステップ以降が活きてくることになる。
 
※10:
「ヒューマンエラー」の定義、および、詳細解説は、組織運営学科コース000002以降のヒューマンエラーシリーズを参照のこと。
 
 
※11:
この考え方は、私のオリジナルの考え方というわけではない。以前から存在する人類普遍の考え方である。
※12:
発見した後・実行してみた後に考えてみれば、誰でも考えつきそうな方法・誰でもやれそうな方法を探すという面では、「コロンブスの卵」の話にも似てなくもない。が、いずれにしても目的に達することが求められるのであり、方法のユニークさは無くても構わない。
 
※13:
このことからも、2-3で述べた「所定の基準」がいかに大切か、ご理解頂けるであろう。
 
 

問題解決研修


フリーWebカレッジ 組織運営学科 コース000500「問題解決の共通ステップ(手順・段取り)」担当講師:蒔苗昌彦 eラーニング 通信教育  
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セクション4「まとめ 問題解決のポイント」    問題解決研修

では、以上の中から問題解決のポイントを確認して、まとめとする。なお、繰り返すが、以下のポイントは、あくまでも組織運営上・業務運営上の問題であり、それ以外の種の問題(たとえば人生問題・社会問題・国際問題等)に関してではないので、誤解なきよう。

ポイント1.所定の基準なくしては、問題か否かの判定はできない。

ポイント2.所定の基準がない場合には、それ自体が問題である。

ポイント3.所定の基準に無理がある場合には、それ自体が問題である。

ポイント4.「建設的な課題」と「問題」は別扱いし、混同してはならない。取り組み方も異なる。

ポイント5.問題解決は前述の通り、ステップ・バイ・ステップにて段階を追って進めていく。

ポイント6.解決不可能と判断した場合には、その判断に至る経緯を添えた報告書と、該当業務・作業の一時停止(または廃止)の上申書等を提出する。組織としては、その情報を組織全体で共有すること。

ポイント7.基準を下げた上で再開するには、基準を下げること自体が問題とならないこと・基準を下げることによって別の問題が発生しないことが必須条件となる。

これにて、当コース「問題解決・概論−1『問題解決の共通ステップ』」を終える。概論として官民業種を問わず適用できるように記述したつもりだが、抽象化が充分でなく全業種を括り切れていない言葉使いや表現となっている点もあろうかとも思う。その場合には、受講者自身が言葉や表現を置き換えることによって対処して頂きたい。

なお、問題解決のシリーズとして、次期は「原因分析の要領」を予定しています。では、また次のコースや別のコースにてお会いしましょう!

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●制作・著作:蒔苗昌彦(担当講師)

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1.財団法人高度映像情報センター eラーニングその他各種教材のポータルサイト 7000を超える教材情報を登録
  → http://www.kyouzai.info/ 

2.マサチューセッツ工科大学(MIT)オープンコースウエア(OCW)。同大学が公開する講義・教材にて誰もが で勉強ができる。
  → http://ocw.mit.edu/

3.日本eラーニングコンソシアム(eLC)が運営するeラーニング情報ポータルサイト。eラーニングに関する最新ニュース、企業・学校のインタビュー、講座、イベント、書籍の紹介。また「eラーニング」製品を検索できる。
  → http://www.elc.or.jp

4.総務庁消防庁が運営する、防災・危機管理がテーマのwebカレッジ。
  写真を活用した分かりやすい内容で、子供から大人、一般人から専門家まで、幅広く学ぶことができる。
  → http://www.e-college.fdma.go.jp


2006年10月20日更新 ネット研修 担当講師:蒔苗昌彦    portrait


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