前のパートで述べたように、当人事制度は、いわゆる正社員・正職員を対象とした制度である。そして、いわゆる正社員・正職員は、全員が、管理職・監督者、もしくはその予備役もしくはその候補者、もしくはいずれそうなれるよう努力義務がある者として雇用する。
それはなぜか? 理由は複数あるが、諸理由を引き離して最も大きな理由は、雇用者側にとっての総人件費管理という課題に根づく。
この課題の前提として、いわゆる正社員・正職員の報酬は、そうではない人たち※1の報酬に比べ、格段と高くせざるをえないという社会的事情がある。これは逆の言い方もでき、臨時従業員・パートタイマー・派遣社員等および「長期雇用フルタイム時給労働者」の報酬は、正社員・正職員の報酬に比べ、格段と安くせざるをえないという社会的事情があるとも言える。※2
この前提により、正社員・正職員には、そうではない人たちに比べ高い報酬を払ったなりの成果を出してもらう必要がある。そうでなければ、雇用者側としては、人的投資の回収率が悪くなる。それによって経営状態が悪化すれば、最悪、多くの正社員・正職員たちをリストラに追い込まざるをえなくなる。
こうした雇用者側・被雇用者側双方にとって不幸な事態は避けるべきだ。
そこで、いわゆる正社員・正職員※3は管理職・監督者もしくはその予備役もしくはその候補者もしくはいずれそうなれるよう努力義務がある者として雇用し、結果全員がそうなるのは無理としてもかなりの確率でそうなってもらう。そして、臨時従業員・パートタイマー・派遣社員等や「長期雇用フルタイム時給労働者」の人たちを多数指揮して大きな成果を出してもらう。つまり、少数の高報酬者が多数の低報酬者を直接指揮・間接指揮するという組織構造を作る。
この構造は、一見、低報酬労働者の搾取を促進するかのように見えるかもしれない。しかし、この構造にすれば正社員・正職員がだぶつくことがないため労働単価の高い彼らの総人件費を抑えることができ、正社員・正職員ではない人たちの人件費に回し彼らの報酬や福利厚生の向上に当てることを、しようと思えば、できるようになるはずだ。決して低報酬労働者の搾取を促進することが目的の構造ではない。※4
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少々脇道に入ってしまったが、ともかくいわゆる正社員・正職員は「管理職・監督者もしくはその予備役もしくはその候補者もしくはいずれそうなれるよう努力義務がある者」として雇用する。
しかし、学校・大学を出たばかりの新入社員も雇用していくことを前提とすれば、全員が即時、管理職・監督者になれるわけがない。また、たとえ努力したとしても、結局のところ管理職の資質を得ることなく定年を迎える人も出てくる。
そこで、まず大きくは「管理職」と「未管理職」という区分を設ける。「非管理職」ではなく、「未管理職」と呼ぶのは、いずれそうなれるよう努力しているものの未だ管理職として任命するに至っていない人たちの群を括るからである。「非管理職」と呼んでもつじつまが合うが、雇用の趣旨としては「未管理職」というほうが適切だ。聞き慣れない言葉かもしれないが、お付き合い頂きたい。
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管理職のほうは階層4と3という縦の区割りを設け、4は部長クラス、3のほうは課長クラスが該当する形とする。
未管理職のほうは階層2と1という縦の区割りを設け、2は現場リーダークラス、1のほうは実務最前線で働くクラスを該当させる。
全員に管理職・監督者を目指す努力義務があるとはいえ、こと新入社員・新入職員においては、育成の観点からも実務最前線で働いてもらう期間を設けるべきであるゆえ、階層1という設定は欠かせない。
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管理職・未管理職とも等級を設け、基礎能力の伸長に応じた昇級を行う。※5 パート1でも述べたように、号俸の要素は一切入れず、その代わり等級をなるべく細かく設定する。上記の図を作成する上では細かい等級の区切りができなかったが、特に未管理職においては、いくら努力しても管理職に任命されることのない人への配慮も含め、実際には数十、場合によっては百を超える数の等級としても構わない。いずれにしても号俸は設定しないわけだから縦に一本化され、等級をいくら細かくしても、縦横のマトリクスの組み合わせとはならず、管理は実に簡素となる。
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管理職の区分においては、役職※5に適任な人がいても、たまたまポストが塞がっているケースがあることと、危機管理の上でスタンバイ要員を置いておくべきという考え方により、「役職予備役」という枠を設けておく。
また、今のところ役職に就く可能性はないが(つまり部下を持つ職務に就く可能性はないが)、役職並みの組織貢献が期待される高い専門技術や専門能力等を持った人たちを「高度専門職」という枠にて扱い、便宜的に管理職の区分に入れる。
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未管理職の区分においては、職制※6に適任な人がいてもポストが塞がっているケースと、職制には適任ではない人・職制になるまでには育っていない人が存在するケースのいずれにも応じるため、全員が管理職・監督者を目指す制度ながらも「非職制」という枠を設けておく。
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なお、管理職・監督者、もしくはその予備役もしくはその候補者、もしくはいずれそうなれるよう努力義務がある者として雇用する以上は、この努力義務をいつまで経っても履行しない場合には契約違反となり、解雇や転職勧奨の対象とする。当然、解雇や転職勧奨を進めるに至るまでの能力考課も低くなる。
この解雇や転職勧奨が上記でも述べたような旧来型の正社員雇用におけるリストラとは異なることは、「雇用時に努力義務の契約締結」→「義務を果たさないことによる契約違反」→「雇用解除」という構図との違いからご理解頂けると思う。
ただし、パート2セクション6「長期雇用フルタイム時給労働者の位置づけ」にて紹介する制度の枠組みを採用すれば、解雇をせず、引き続き会社で働いてもらうための受け皿はできることになる。


