三十三、お墓場テーマパーク
「おっ、秋山さん」
高泉が早朝の公園から戻ると、高尚寺の秋山青年が来ていた。
「おはようございます。差し上げたサングラス、なかなか似合ってますね」
「サンキュー。巡回はちゃんとやってるよ。まだ業務報告書は送ってないけど」
「ええ、分かっています。いずれ郵送して下さい。信用してますから」
「じゃ、なんで来たの?」
「今、墓所を、全体的に綺麗にしようと企画していまして」
「そりゃ、いいことだ。荒れ放題だって、近所の評判が悪かったからね。蚊も出なくなるだろうし、俺も巡回の時、助かるよ」
「ええ。そうした面もありますが、別な意味でも綺麗にしようと思っているんです。いわゆるリニューアルですね」
「リニューアル? なんだかテーマパークかアウトレットタウンの話みたいだね」
「えっ? 高泉さんでもそうした場所、知ってるんですか?」
「ずいぶんだねえ、その言い方。サラリーマンだった時、付き合っていた彼女に何度も連れられていったから、俺だってよく知ってるよ」
「デートですね」
「まあ、同棲同然だったから、デートって呼ぶかどうか分からないけど。そんで、リニューアルということは、なんか大幅に施設改善するわけかい? 商業集客施設じゃあるまいし、という感じがするけど・・・」
「予算を睨みつつですが、どうにか工夫をして集客を図ろうと検討を始めたところです。今日は、相談に乗ってもらうことになった空間コンサルタントと現場の視察です」
「いくらなんでも難しいんじゃないの?」
「それをどうにかクリエートするのが、私の職務ですからね。ま、仏舎利塔をシンボルタワーにお墓がテーマのミニテーマパークとして、それをフックに色々と売上が立つ企画を打ち出そうというわけです。広告代理店にいた時はいつも、無から有を生むようなことをしてましたからね。すべてはこれからですが、やればきっとどうにかなるでしょう」
「そうかあ、さすが若くして経営企画部長に就任しただけあるねえ」
高泉は石畳の上で立ったまま腕組みをし、すっかり感心した。
「ふえっ! そんな感心しているんじゃったら、あのこと、相談してみたらどうじゃい」
門のほうから突然、味噌屋の声が聞こえた。早朝とはいえ、すでに産業道路は賑わっていた。が、いつも以上に大きな味噌屋の声は、大型車両の轟音をすり抜け、高泉の背中にしっかり届いた。
「おっ、また味噌漬けの試食かい? いつでも歓迎だぜ」
「なに寝ぼけたこと言ってるんじゃ、まったく。ふえっ!」
普段から年齢以上にしゃっきとした味噌屋はそれ以上にしゃっきとし、つかつかと寄ってきた。
「あ、紹介するよ。これ、商店街の裏の長屋の味噌屋さん。帰りにでも、味噌漬け買ってやってくれ。味は保証するから」
「ええ、いいですよ。味噌漬けは父の好物なので、おみやげに」今日もスーツをきちっと決めた秋山青年は、快く応じた。
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