【四】
国を超え多くの人が買い求める物ゆえ、砂糖は世界商品とも言われます。もちろんのこと、世界商品は、砂糖だけではありません。
a
一六三七年 前年に国号を清と改めた後金、朝鮮を攻め、属国とする。
b
おぐさんのいこをやるごとになた斉藤だはんで。おべえてけへえやー。
(奥様の家を担当させて頂くことになりました斉藤です。よろしくお願い致します)
あれやぁ、わのほうごそさー。
(こちらこそ。よろしくお願いしますね)
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なぜ癌になったのか。原因は明白だ。酒と煙草、そして夜遊びが過ぎたからである。これらの中でも、特に煙草は我ながら凄いと思う。手にしていない時は、飯か風呂か、睡眠中。フィルターのない紙煙草に加え、毎日一本の葉巻、週末にはパイプやキセルまで楽しんだ。煙草の見本市を一人で繰り広げてきたようなものである。早々に女房が出ていっちまったのも、夜遊びだけが原因と言い切れないだろう。
禁煙ブームが到来してから、この俺も止める努力を試みた。しかし、特に取材の構想を練る時や記事を書く時には、漂う煙がなければ落ち着かない。それどころか、かえって息が苦しくなってしまう。入院してあっちゃこっちゃを切ったり貼ったり。痛い思いでようやく反省しているわけだが、もし仕事に復帰できたとしたら、やはり煙は必須アイテムだろう。が、二度と吸うなと医者に釘を刺されている。うーむ、新聞記者としての生命は終わったも同然ということか。情けない。ま、このままあの世に行けりゃ、収まりがいいってことだ。まさに年貢の納め時だな。
d
和尚を慕ってくる人は多いものの、庵と呼んだほうがいい建家だから、部屋も少なく狭い。昔は調整がつかず、玄関や縁側、廊下にまでごろ寝したほどであった。しかし、今では後援会の幹事が、宿泊調整用のサイトを運営している。そのため、一晩の宿泊者は数人の枠内に必ず収まる。高齢となった和尚としても、そのほうが落ち着くようで、歓迎しているようだ。
「そうですかあ。いや実に大変なお仕事ですねえ……」
「見方によってはそうなりますが、私の致命的な欠陥をそのまま応用してもらっただけのこと。むしろ機関に救ってもらったと思ってます」
「欠陥だなんて、表現が合っていませんよ。こうやって一緒に時間を過ごしていても、Kさんには和尚なみの人徳を感じます」
「恐れ入ります。でも、最悪、激しいひきつけを起こしたような状態になるので、普通の人は皆、びっくりしてしまいます。今では、その事態となる前に、医療班の管理下に置かれてしまいますが……」
「で、もしその事態が近づいた場合、運営チームは1時間以内で到着するとの話ですが。この庵にいる時にそうなったら?」
「ヘリ数機で、人員と機材を投下していきます」
「隔離室は?」
「それも、ヘリが置いていきます。コンテナのような仕様ですからね。それにモニター室。あと仮眠室を兼ねた休憩室や、警備室も……」
「この辺りに、そんな広いスペース、ありましたっけ?」
「東に二十分ほど歩くと、電波塔とその管理棟があるでしょう」
「あ、はいはい。マイクロ波通信を経由するために使われていた古い施設ですね。うーむ。たしかにあの周囲は平らになっている。でも、散歩で山に入り込んでくる人も多いだろうから、騒ぎになってしまうのじゃあ?」
「日米露中、四ヶ国合同の特殊電磁波実験として、自治体から許可を取ってあるので、カモフラージュできています。半径百メートルほどのフェンスもありますし」
「いやはや……」
「この寺で時折お世話になるのも、丁度いい位置に、転用できる古い建物があったから」
「なるほど。でも……」
「ええ。でも、もちろん和尚の人徳なくしては、そもそもここに来る意味がありませんからね。人的な要件と、地形的・施設的な要件が偶然重なったというわけです」
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所長に就任した高橋は、第二週にしてさっそくボラバイトの人たちを集め、ミーティングを実施した。ボラバイトとは、無償ではかえって無責任になるとの考え方から、低い時給で働いてもらう奉仕活動である。ボランティアとアルバイトをつけた造語だ。
では、コミ健としてはどのような仕事をボラバイトに依頼しているのか? それは、健康連絡委員である。団地内をいくつものエリアに分け、エリアごとに置かれた委員が、住民からの健康相談をまめに拾い、コミ健に勤務している保健師たちにつなぐのだ。
ともかく、以前は「保健相談所」という名称であったため、飲食店の営業を届け出たり犬の登録をしたりする「保健所」と混同してしまう人も多く、せっかくの相談体制を充分に利用してもらえていない。だからボラバイトとはいえ、健康連絡委員は、コミ健の存在意義に直接関わる重責を担う。高橋がただちにミーティングを開催するのも、意欲ある新所長としては当り前な行動なのだ。
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