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人道問題小説「お砂糖」  蒔苗昌彦


【十五】

 南米や中南米、カリブ海の島々の甘藷畑では、無数のアフリカ人奴隷が作業に従事しました。

 

 一八九八年 キューバでの事件を契機に始まった対スペイン戦で勝利した米。フィリ

       ピン、グアムなどを統治下におく。また、同年、ハワイを併合。太平洋

       への進出力を強化。

 

 ひごぉぎだあっー!

(飛行機だ!)

 みな、めねぐなれ! めねぐなれ!

(みんな、隠れろ! 隠れろ!)

 

「新築してから、来館者がとても増えましてね。特に宣伝する必要はなくて」

「ほう、それは素晴らしいですねえ」

「まあ、年に一回、全体整理をするために閉館する時期がありまして。その日程が住民に伝わっていないと迷惑掛けますから、その際に掲載させて下さい」

「はい。こちらこそよろしくお願いします。ではまた……」

 最初はこんなものだ。門前払いされなかっただけでも好意的である。来月また訪ねてみよう。それに、コミュニティ会館内に点在している小規模の分館も含めれば、区の図書館は結構な数だ。その中には、世杉第一図書館のように盛況ではない館もあろう。そうした所の館長ならば、もっと積極的かもしれんから、片っ端から廻ってみよう。ともかく、新企画「お奨め図書コーナー」のワクを、図書館側からの寄稿で賄いたい。

 で、次の訪問先は、と……。

 ふむ。市販の地図で見るぶんには、第二図書館より、団地の保健相談所のほうが近いな。区の広報担当者も、ここを訪ねてみるよう推していたことだし。

なにしろ入院のおかげで足が萎えちまった。それこそ足で稼ぐ取材源。網の目のように走っている都営バスを使う手もあるが、とりあえず保健相談所には、歩いていこう。良い運動の機会だ。

 

 コンディションはまだ1に至らなかった。が、ようやく2と3の間の行き来するほどには安定した。

 壁に付いている畳一枚ほどの大きさのモニター装置。おぼろげながらも画像らしきものが浮かんだ。そして、スピーカーからも雑音に混じって人の声らしき音が、時おり聞こえ始めた。

 

 晴れ渡り風も吹かず、長い時間ベンチに座っていても苦ではなかった。本来おおらかな西村は、むしろのどかな気分になった。

 なにしろ都内でも最大規模の世杉団地。その中にある複合型商業施設の前ともなれば、人通りも多い。

 二階建てということもあり、さすがボーリング場やシネマコンプレックスなどのレジャー施設までは無いが、かなりの平面積。スーパーを核に、本屋、自転車屋、クリーニング店、惣菜屋、八百屋、魚屋、酒屋、花屋、百円ショップ。歯科クリニック、整体マッサージ、子供の音楽教室もある。中華料理店、蕎麦屋、寿司屋、とんかつ屋等、旧来タイプの食事処もあるが、大手チェーンのハンバーガー店も入っている。

 西村は、ちょうど南西の角に位置するハンバーガー店の右斜め前にあるベンチに腰掛け、例の美人ちゃんが通らないものかと待っていた。というのも、ハンバーガー店の横にはこの商業施設最大の出入り口があり、また、おそらくは彼女が住んでいる棟からスーパーまでの最短経路に当たるからだ。いわば張り込みをしたのである。

 子供を学校に送り出し、一通り家事を行ない、早めの昼食を済ませ、昼前から張り込みを始めた西村。しかし、例の美人ちゃんはその前を通らなかった。

 

<次章へ続く>

 
  あらすじ 

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小説中に登場する人物・団体・施設・出来事等は全て架空(フィクション)です。

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