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人道問題小説「お砂糖」  蒔苗昌彦


【二十五】

 甜菜による砂糖の増産に伴い、経営破綻する甘藷栽培地が一時期続きました。

 

 一九一七年 露で共産主義革命。帝政終わり、ソビエト政府樹立。

 

 あぎごやー。斉藤さんやー……

(昭子やー。斉藤さーんやー……)

 わいはあー、おぐさん、どへえしてきたばして!

(あっ、奥様!よくぞここまで!)

 

「あ、コミュニティ紙の木鋳寺ですが……。所長さんですか? さきほど、1回目の原稿、FAXしましたので、内容の確認、よろしくお願いします」

 

「ミスターK!ミスターK!こちらモニター室、モニター室……」

ザザーッ、ガガガーッ、ゴゴゴ、ピーピーガーガー……

「駄目だ。いくら呼びかけてもKさんからの返信がない」

 マイクに向っていた主任技師はがっくりと椅子の背もたれに身体を預けた。そして、隣りの技師補を横目で見ながら言った。

「仕方ない。センターへ作業停止検討会の開催を申請してくれ。私は医療班との協議に行ってくる」

「えっ! メディカルアラートはまだ出ていないじゃないですか?」

研究員Sは思わず立ち上がり、モニター室を出て隔離室へ向おうとする主任技師に声を掛けた。

「いや。たしかにアラートは出ていませんが、こんなに雑音が多いのは初めてなので……」そう言いながら主任技師は急ぎ足で出ていった。

 

「こちらが、何度かお話した所長さんよ」

 西村は美人ちゃんを高橋に紹介した。

「はじめまして。お越し頂き、ありがとうございます」

「はじめまして……」

「当所のボラバイト制度に関心を持って下さり、ありがとうございます。なにしろ、最低賃金の時給しかお支払いできませんし、稼動時間もそう長くないため、月額も僅かで。地域の健康づくりという責任の重い活動をして頂くせいか、引き受けて下さる人も少なくて……。いずれにしても、制度を詳しく説明しますから、充分納得頂いた上で、契約して下さい。質問も遠慮しないで下さいね」

「はい。分かりました……」

「では、まずは、このコミ健の設立と運営コンセプトについて詳しくレクチャーさせて頂きたいのですが、お時間、大丈夫ですか?」

「どれほどの長さですか?……」

「そうですねえ。休憩を含めて三時間ぐらいかかるでしょうねえ。でも、たとえば今日は一時間だけにして、あした一時間、あさってまた一時間というように分けて行なうのも、大丈夫ですよ」

「じゃ、そのように……」

「それでは、始めましょうか。西村さんも復習として、付き合って下さいね」

「はい!」

「まず、前身の保健相談所とは……」

 高橋は詳しく話し始めた。ともかく、美人ちゃんの側から相談を持ち出してくれるようにするための環境作り。だから、詳しくとはいえ、難しい言葉は極力使わず、話すペースも普段以上に間合いをおきながら、ゆっくりと話した。その意図を了解している西村も、応接室内にリラックスした雰囲気を醸し出そうと、思い切り力を抜いてソファに身体を預け、自宅のリビングでくつろいでいるかのように振舞った。

<次章へ続く>

 
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小説中に登場する人物・団体・施設・出来事等は全て架空(フィクション)です。

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●制作・著作:蒔苗昌彦

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