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人道問題小説「お砂糖」  蒔苗昌彦


【三十三】

 戦争の進行に伴い、砂糖の供給量は著しく落ちました。

 

 一九四五年

   二月 英米ソ、ヤルタ会談。千島やサハリンの領有を英米が保障することを引き

      替えに、ソの対日戦参戦を誘う。

   七月 米英、対日戦参加促進のためにもポツダム会談へソを招くが、直前、米、

      核爆弾実用化に成功。ソの対日戦参加の必要性、一気に薄れる。

   八月 米、日へ原爆投下。

      すかさず、ソ、日へ宣戦。満州・朝鮮・南樺太・千島に侵攻……

 

 あぎごや、あぎごや。おきてけへえ。

 (昭子や、昭子や。起きておくれ)

 アパ、どしたばして……

 (お母さん、どうしたの……)

 あぎごも、いいどごさ、いぐだね。

 (昭子も、旅行に行くことになったのよ)

 アパは?

 (お母さんは?)

 アパさあ、あどがらゆぐはんで。

 (お母さんは、後から行くから)

 いやあ、ふとりでやんだべさあ!

 (ええっー、独りじゃ嫌だよー)

 いいはんで。アヤだの、しんちゃだの。それど、おねえちゃもむげにくるはんで。

 (大丈夫よ。お父さんや、進ちゃん。それにおねえちゃんも迎えに来るから。

 ほんとだがして?

 (ほんとう?)

 ほんとだてばー。

 (ほんとうよ)

 わいはー。

 (わーい!)

 そんだば、ちからつけねば、まいねはんで。これ、なめへんが。

 (さあ、元気をつけなくちゃ。これ、お舐め)

 なんだばして?

 (なあに? それ?……)

 さどごだね。

 (お砂糖よ)

 めってば、めってば!

 (おいしい、とってもおいしい!)

 いがったのー、いがったのー。

 (よかったねえ、よかったねえ)

 もと、けへえじゃ。

 (もっと、ちょうだい)

 いいどごさいたら、もとなめへえ。んだがして、みな、むげにくるはんで、ねながして。

 (旅行に出たらもっとお舐め。さあ、お迎えが来るまで眠りましょう)

 うん!

 (はい)

 あずましくねへや。

 (おやすみなさい)

 うん……

 (はい)

 ねーへやねーへや、めごこだね。なげばあ、やまがら、もこくらねえー

 (寝なさい寝なさい、良い子だネ。泣けば、山から蒙古が来るよ)

 あぎごや、あぎご……

 (昭子や、昭子……)                         

 了

 
  あらすじ 

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